近所の保育園の前を掃除していた日曜日の朝のこと。
足元には、風に揺れた笹の葉があちこちに散らばっていた。
ふと園内を覗くと、七夕の飾りがゆらゆら揺れている。
「(あぁ、風流だねぇ……。懐かしいなぁ……)」そんな言葉が自然と口からこぼれた。

短冊には、子どもたちが一生懸命に考えた願いが書いてあるんだろう。
その中の一枚が、風に揺れながら目に入った。
「おとうさんがかえってきますように」
その瞬間、笹の葉よりも心がサラサラと揺れた。 願い事って、時々“真実”がそのまま書かれる。
子どもの言葉は、飾り気がないぶん、まっすぐ胸に刺さる。
七夕──タナバタ。 願いが棚ボタみたいに叶えばいいのに。
そんなダジャレを浮かべてみても、 この短冊の重さは軽くならない。
でも、願いは空へ昇る。 笹の葉が落ちても、想いは落ちない。
風が吹いても、文字は消えない。
子どもの願いは、案外、大人より強い。
今日も掃除をしながら思う。 落ち葉は拾えるけれど、 誰かの願いは拾えない。
だからせめて、 願いが届くように、 せめてこの道だけはきれいにしておこう。

