朝の静けさを破るように、会社のスマホが震えた。 画面には 見知らぬ番号

自分のスマホなら絶対に出ない。

しかし、これは会社のスマホなので、出ざるを得ない。

恐る恐る通話ボタンを押すと、 いきなり低めの声でこう言われた。

「はんまみさんですか?」

名乗りなし。 挨拶なし。 いきなり名前確認。

(あ、これ怪しいやつだ) 先週 はんまみさん にかかってきたやつだ!

冷静に返す。

「いえ違いますけど、どちら様ですか?」

すると相手は、 まさかの逆ギレ気味でこう言った。

「はんまみさんでない人に自分の名前は言えません」

ここまでの流れ、 はんまみさんの時と完全一致。

(詐欺だ。 どこまでお話をしようかと企む)

相手は名前を名乗らない。 こちらの名前だけ確認してくる。
しかも“はんまみさん”という謎の確認。

つまり—— 向こうは台本を持っている。 私はアドリブで遊べる。

電話の向こうの空気が、 妙に張りつめている。

私は少しだけ声を落として言った。

「……あなた、はんまみさんを探してるんですか?」

相手は一瞬だけ沈黙した。 その沈黙を逃さず、私は続けた。

「はんまみさんは、そんな簡単に出てきませんよ」

「……え?」

「はんまみさんは、朝は寝ぐせで髪が逆立ち、 シャツを裏返しで着る伝説の方です」

「……え?」

「『はいどーぞ!』と言いながら、 人の心をかき乱す天才です」

「……え?」

「そのはんまみさんを電話で呼び出せると思ってるんですか?」

相手は完全に混乱した。

「……えっと……その……」

私はさらに追い打ちをかける。

「はんまみさんと関わって訳の分からない事を言ったら、
『いい~~!わかったぁ~~?』って30回は言いますよ」

沈黙は、相手の台本を破壊する。 ページをめくる音すら聞こえない。

やがて、 相手は小さく息を飲んだ。

「……間違えました」

そして ガチャッ と切れた。

🖤【闇の韻で締める】

名乗らぬ声は、名乗れぬ事情。

闇を呼ぶなら、闇が応じる。

はんまみの次は私の番。

朝の静寂に落ちる疑心。

台本崩壊、闇の勝ち。