11,000ポイントを獲得したあと、 秋本さんはスマホをそっと机に置き、
満足げにコーヒーをひと口飲んだ。
その横でまみちゃんが 「はいどーぞ!今日のミッション完了〜!」 と、
なぜか自分の髪の寝ぐせを整えもせずに言い放つ。
事務所の空気は、 さっきまでの“アプリ攻略戦”の熱気が嘘みたいに静かになり、
コピー機の音だけが規則正しく響いていた。
◆ いつもの空気、いつもの秋本さん
前園さんはというと、 「秋本さん、また注文電話してもらっていいですか?」
と近づいてきたが、 秋本さんは11,000ポイントの余韻に浸っていて、
その声がまったく耳に入っていない。
——いや、入っていないフリをしているだけかもしれない。
なぜなら秋本さんは、 前園さんに“利用されているつもりが、
逆に利用している” という不思議な立ち位置を持つ人だからだ。
まみちゃんはまみちゃんで、 「もしもーーし!秋本さん、この納品書おかしくない?」
と呼びかけるが、 秋本さんはゆっくり椅子を回しながらこう言った。
「朝、旦那と喧嘩したのを思い出してムカついたから〜、ちょっと休憩〜」
その言葉に、 事務所の全員が 「あ、いつもの秋本さんに戻った」と心の中で頷いた。
◆ いつもの空気、いつもの秋本さん
11,000ポイントの冒険は終わり、 事務所はまた、いつもの日常へ戻っていく。
でも—— その日常の中心には、 やっぱり秋本さんの明るさがあった。
そして、 まみちゃんの「はいどーぞ!」があった。
そして、 前園さんの“知恵袋攻防戦”があった。
結局この会社は、 誰かが迷子になっても、 誰かが寝ぐせでも、
誰かがポイントに必死でも、 ちゃんと回っていく。
なぜなら—— この事務所には、 今日も秋本さんがいるからだ。


